異形の宇宙人たちが集う宇宙空港や新型爆弾で滅びかけた地球を舞台に起こる波乱と冒険のドラマ——ＳＦという新ジャンルの面白さを伝えようという手塚の意気込みが伝わってくるのが、『 おもしろブック版ライオンブックス 』（１、２巻、小学館発売）だ。 初めて本格的にマンガにＳＦを持ち込んだといわれる１９５６、５７年の月刊少年誌の雑誌付録１２冊をカラーページやＢ５判の迫力そのままに復元。全集でも読めなかった「双生児殺人事件」の収録も貴重だ。一方、『 花とあらくれ 』（同）は、５０年代後半、貸本漫画誌に発表した劇画を集大成。当時は、大人向けの「劇画」の誕生期だが、既に子供向けマンガのスターだった手塚が、いちずに約束を守ろうとした男の執念を描く表題作などで、大人向けの作風を切り開こうとしたことが分かる。
Yomiuri Online